盆棚の敷物は何を敷く?真菰・ござ・白布の違いを解説

い草のゴザを敷いて整えた市原市の新盆飾り

新盆の盆棚には、なぜ敷物をするのでしょうか。

かつて用いられてきた真菰と、現在、当店の盆棚に敷いているい草のゴザ。

素材の違いをたどりながら、故人を迎えるために場所を整えることについて考えます。

盆棚に真菰(まこも)やゴザを敷く意味


新盆を迎えるために設けられる、盆棚。

当店の新盆飾りでは、棚の上から前面にかけて、い草のゴザを敷いています。

その上に供物を並べ、蓮華を飾り、提灯に灯りをともして、故人を迎える準備をします。

ゴザは、棚板を隠したり、見た目を整えたりするためだけのものではありません。 一枚の敷物をすることで、普段の暮らしの中に、故人のために用意された場所が生まれます。

盆棚に敷物をすることもまた、故人を迎えるための場を設える、 大切な準備のひとつだと私たちは考えています。

以前は真菰が主流でした

真菰(まこも)は、水辺に群生するイネ科の植物です。 古くから敷物などの生活用品に利用されるとともに、祭事にも用いられてきた例もあります。

盆棚に真菰を敷くという行為は、単に植物を床に広げることではなく、 故人を迎える場所を整えるという考え方が重ねられてきたと考えられます。

ただし、なぜ盆棚には真菰でなければならなかったのか、 その起源を一つの理由だけで説明できる資料は、現在のところ明確ではありません。

暮らしの身近にあった植物であること。
敷物の材料として使われてきたこと。
祭事とも関わりを持ってきたこと。

そうした複数の背景が重なり、故人を迎える場所にも用いられるようになったのではないでしょうか。

真菰とい草のゴザは別のもの

現在「ゴザ」と呼ばれて販売されているものの中には、 真菰を編んだもののほか、い草や葦などを用いた敷物もあります。

真菰とい草は、同じ植物ではありません。

そのため、当店で使用しているい草のゴザを、真菰そのものと説明することはできません。

本来の真菰を用いた敷物も未だ販売されていますが、 流通量が限られ、盆棚全体に用いるには非常に高価なものとなっています。

そこで当店では、現在の暮らしの中でも無理なく盆棚を整えられるよう、い草のゴザを使用しています。

素材は真菰からい草へ変わりました。しかし、敷物をして故人のための場所を設けるという考え方は、失わずに残したいと思っています。

故人を迎えるための場所

新盆には「盆棚」や「精霊棚」と呼ばれる場所を設けます。 そこに供物を用意し、花を飾り、灯りをともして故人を迎えます。

家の中に設けられる、故人のためのひとつの場所。

そのように考えると、盆棚の敷物は、部屋の床にも似た役割を担っているのかもしれません。

い草のゴザが敷かれることで、供物、蓮華、提灯がひとつの空間としてまとまり、 故人を迎えるために整えられた場所であることがより明確になります。

当店の盆棚をすべてゴザ敷きの仕様としているのも、こうした考えによるものです。

四十九日までの白布

四十九日までに使用される祭壇や経机には、白布や白木を用いることが多くあります。

白を基調とした飾りには、 突然の出来事であるがゆえに、準備が十分に整わない様を表していたり、 余計な色を加えず、慎みをもって供養する時間が表れているとも考えられます。

一方、新盆は一般的に、四十九日の忌明けを過ぎてから迎えます。

故人を亡くした悲しみがなくなるわけではありません。 それでも、葬儀から一定の時間を経て、今度は故人を家へ迎えるために、 家族や親族があらためて場所を設えます。

白布からゴザへ。
白い飾りから、銀や赤などの彩りへ。

新盆に設えの色彩が変わることには、故人を送る時間から、 あらためて迎える時間への移り変わりも表れているのではないでしょうか。

敷物をしなくてもいいの?

近年では、棚板を見せたまま飾ったり、新盆の盆棚にも白布を用いたりする設えを目にすることがあります。

しかし、市原市周辺で代々受け継がれてきた考え方では、白布は主に四十九日までの設えに用いるものです。

新盆には、故人をあらためて迎える場所として、 真菰やゴザなどの敷物を用いて盆棚を整えてきました。

そのため当店では新盆の盆棚に白布を使用せず、 現在もい草のゴザを敷くことを基本としています。

これは、ゴザの方が豪華に見えるからでも、 昔と同じ形だけを守りたいからでもありません。

四十九日までの白い設えと、新盆に故人を迎える設えとでは、 その時間の意味が異なると考えているからです。

変化しても残しておきたいこと

本来の真菰ではなく、い草のゴザを用いていることに 疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。 けれども、文化は昔とまったく同じ材料を使わなければ 受け継げないものなのでしょうか。

真菰は現在では流通量が少なく価格も高いため、多くのご家庭では、代わりにい草のゴザが用いられるようになっています。だからといって、何も敷かず、故人を迎える場所を整えるという考え方までなくしてしまう必要はありません。

かつて真菰が担ってきた意味を知り、現在の暮らしにかなうい草のゴザで場を整える。

それもまた、形だけではなく、そこに込められた考え方を受け継ぐ ひとつの方法だと私たちは考えています。



新盆の盆棚には、さまざまなものが並びます。 提灯に灯りをともし、蓮華で彩りを加え、供物を用意し、その下に敷物をする。

一つひとつは小さな飾りや準備に見えるかもしれません。しかし、それらが重なることで、 日常の暮らしの中に故人を迎えるための場所が形づくられていきます。

なぜ真菰を敷いてきたのか。
なぜ今も、盆棚にゴザを敷くのか。

その意味を知ると、一枚の敷物も単なる棚の装飾ではなく見えてきます。

大切な人を迎えるために、その人のための場所を設ける。

盆棚にゴザを敷くことには、 故人を迎えるために場を整えてきた昔からの考え方が今も残っているのだと思います。


❏ 地域の風習について
本記事は、千葉県市原市を中心に、袖ケ浦市・木更津市など近隣地域の風習をもとにご紹介しております。
お盆の飾り方やお供えの内容は、地域やご家庭によって異なる場合があります。
鯉徳では、それぞれの地域やご家庭に合わせたご案内をしておりますので、新盆の準備で迷われた際はお気軽にご相談ください。


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