コレクション:

五月人形 多ヶ谷一光

平安~鎌倉時代の甲冑美を追求
甲冑師 多ヶ谷一光


老舗人形専門店の目利きバイヤーであれば、誰もがその名を知る甲冑師 早乙女義隆(さおとめよしたか)。武具研究家 笹間良彦氏に甲冑(鎧・兜)を学び、主に平安~鎌倉時代にかけて作られた"大鎧"のフォルムを当時に限りなく近い製法と素材を以て制作に臨んだ稀代の甲冑師です。

細部に至るまで徹底して作り込まれた作品の数々は、人形関係者のみならず目の肥えた専門家たちからも高い評価を得ていた反面、市場に流通する数量は限られ、販売価格も当時の一般的な五月人形よりも遥かに高額なものでした。


埼玉県で人形店を営む傍ら早乙女作品の素晴らしさに惚れ込み、「このような美しい鎧や兜を少しでも多くのご家庭に届けたい」との思いで自ら作り手の道を志した多ヶ谷昇氏は、同県在住の甲冑師である米持一美氏や初代大野龍玉氏の手ほどきを受け江戸甲冑制作を開始。

早乙女同様、平安~鎌倉時代の大鎧をモデルとしながらも独自の手法を駆使し「手間暇かけた美しい作品を少しでも手の届く価格帯に」と数々の工夫を凝らしながら、その生涯を甲冑制作一筋に捧げました。この実直な思いから誕生した多ヶ谷氏の作品が掲げる作号、それが多ヶ谷一光です。


初代多ヶ谷一光が人生をかけ産み出した伝統技術と哲学は後進へと継承され、今もなお変わらぬ製法と造形で剛健実質な甲冑を制作しており、人形専門店の目利きバイヤーはもちろん、初節句を迎えるたくさんのご家庭にその素晴らしさを伝えています。

多ヶ谷一光の特徴とこだわり。

造形に伴う哲学

ここ数年購入者の嗜好が多様化し、様々なフォルムの鎧や兜をつくる工房が増えているなか、多ヶ谷一光は「平安~鎌倉時代の甲冑(大鎧)が最も華やかで美しく、祝いの席(節句)にふさわしい」と早乙女義隆が抱いていた理念に基づき、その時代の甲冑の造形だけに絞り制作しています。

この姿勢は「手間暇かけた美しい鎧や兜を少しでも手の届く価格帯に」と掲げた信条のもと、余計な開発費や時間はかけないという徹底した合理主義、つまるところ自身の制作哲学にも通じているのです。

五月人形 兜 多ヶ谷一光

▲ 現在サイズは兜2種、鎧1種のみ。兜の印象を左右する正面の鍬形(くわがた)も主に使用されるのは長鍬形1種のみ。

惜しみないひと手間

金属を多用する性質上、成形された部品を組み上げるだけでは無機質な"工業製品"になりかねない鎧や兜。多ヶ谷一光はその金属にひと手間を加えることにより、温もりと品格ある"工芸品"へと昇華させています。

五月人形 兜 多ヶ谷一光 深彫台

▲ 深彫台。2本の鍬形(くわがた)を支える鍬形台に手彫りで模様を描いています。(※一部商品対象)

五月人形 兜 多ヶ谷一光 厳星

▲ 頭を覆う鉢(はち)の部分。成形時に板同士をはぎ合わせる鋲(星)をひとつずつ手磨きし、色味の奥行きと使い込まれた金属の重厚感を持たせています。(※全商品対象)

匂い立つ美意識

「節句品はおもちゃではなく、ご家族の想いが詰まった神聖なお守りである」との観点から美術工芸品的側面ももちあわせていた早乙女甲冑。この流れを汲み、素材の選定から完成時の造形に至るまで美意識をもって制作に取り組んでいます。

五月人形 兜 多ヶ谷一光 印伝革 甲州印伝

▲ 兜両脇の吹返(ふきかえし)とよばれる部分には甲州印伝を使用。甲州(山梨県)で400年以上にわたり伝承される、鹿革に漆で模様付けをした伝統工芸品です。(※当店全商品対象)

五月人形 兜 多ヶ谷一光 シルエット

▲ 背後からの攻撃から首を守るために取り入れられた鎌倉期に見られる兜の形状。他の甲冑師があまり採用しないため、ひと目で多ヶ谷作品と認識できます。(※全商品対象)


揺らぐことのない信念を持ち、ひとつのカタチの完成度を極限まで突き詰めながら後世に残すべく作品を実直につくり続ける甲冑師 多ヶ谷一光。職人から職人へと連綿と受け継がれてきた“平安~鎌倉甲冑の美“をぜひご堪能下さい。



多ヶ谷一光

昭和30年埼玉生まれ。甲冑師 早乙女義隆の作品に憧れその生涯を甲冑制作一筋に捧げる。現在その伝統技術と哲学は後進に継承され、変わらぬ製法で平安~鎌倉時代の甲冑を手本とした剛健実質な作品を制作している。