コレクション:
春日部押絵羽子板の先導者。匠一好
有限会社さか田は坂田宗觀氏(現会長)により昭和49年、埼玉県春日部に創業。商標"匠一好"の名で知られる豪華絢爛な押絵羽子板を制作する工房です。
埼玉県春日部は"羽子板の産地"として知られ、完成品は埼玉県指定の伝統的手工芸品にも指定されています。しかしその歴史は意外と浅く戦後から盛んになったのだとか。
戦前、もっとも羽子板生産の多かった浅草一帯が戦災で瓦礫と化し、江戸の羽子板職人達が良質な桐材が手に入る春日部に移住したのが始まりとされています。
数ある工房の中でも坂田さんが制作する羽子板の特出すべき点は、使用されるパーツ数の多さ。綿をつめたパーツを一つずつ作り、それをジグソーパズルのように組み合わせ押絵羽子板は完成していくのですが、その数が他の工房に比べはるかに多いため、より立体的で表現力豊かな造形美を形成しています。
羽子板の印象を左右する顔(=面相/めんそう)は全て手描き。面相師であり、日本画家でもある鈴木創博氏により描かれています。本物の化粧品を使用したり、日本画の顔料を混ぜてみたりと試行錯誤を繰り返し、その時々に"最高のお顔"を創造しています。
また羽子板の土台となる素材には良質な"会津桐"を使用。飾ったときに正面から見えない裏面にも手描きで梅や竹などの吉祥文様を入れ、羽子板が単なる飾り物ではなく"厄除けや健康祈願の縁起物"であることを刻み込んでいます。
女性が活躍する工房の力
工房には女性スタッフも多く、丁寧な仕事ぶりはもちろん、生地の選定から色柄の活かし方まで女性ならではの目と感性をもってサポートしてくれます。毎年鯉徳オリジナル羽子板を制作してもらうにあたり、販売する私たちにとっても非常に心強い存在なのはいうまでもありません。
羽子板という伝統的で限られた造形の中に、これまで用いられなかった新しい素材や技術を大胆に落とし込むセンスもまた匠一好の特徴のひとつ。それは柔軟な発想力と色彩感覚を併せ持つ女性スタッフが多いこの工房ならではと感じさせてくれます。
"羽子板の里・春日部"を全国へ
羽子板制作だけにとどまらず、坂田会長を中心に羽子板の啓蒙活動や地域活性化運動も積極的に行っており、"羽子板の里・春日部"を各所で猛アピールしている姿にも好感がもてます。
工房内外の多くの人たちとの関わりの中から生まれるものづくりは世代を問わず今の時代に美しいと感じさせるだけの説得力があります。女の子が生まれたご家庭だけでなく、ぜひ多くの方に手に取ってもらいたい工芸品です。