江戸の職人がみせる、ジャパンクオリティ

女雛の後ろ姿にご注目を。かさねの一枚一枚の色彩がより美しく見えるよう、長く尾を引いた着付けにこだわり、写実的な十二単の美しさを追求しています。

また金糸や銀糸をふんだんに用いて大胆な絵柄で魅せる『京風の華美な趣』とは異なり、 自然で落ち着いた色合いや柄、生地そのものの織り方や素材感に重きを置いた衣装を採用。渋好みな『江戸の粋』を良しとする、江戸衣裳着雛人形の制作者ならではのこだわりがそこにあります。

衣装へのこだわり

男雛、女雛の衣装には、ともに伝統的な『有職文様（※1）』を採用しています。

男雛にほどこされた文様は『鴛鴦紋（おしどりもん）』です。つがいで仲睦まじく過ごす鴛鴦の習性から、『夫婦円満』や『愛の象徴』など、縁起の良い文様として古くから用いられてきました。

女雛には『雲立涌（くもたてわく）』とよばれる古典柄をあしらっています。雲気（水蒸気）が立ち昇るさまを図案化したもので、雲気の上昇にちなみ『運気上昇』の願いが込められています。こちらも縁起の良い文様です。

（※1）有職 / ゆうしょく・ゆうそく
平安時代より公家の邸宅の内部・調度品・服飾品などの装飾に使われていた文様で、幾何学的な柄が繰り返し紋様になっているのが特徴。見た目の派手さはなくも精緻な模様を織り出しているため上品さがあり、 時代に流されない普遍的な美しさを兼ね備える完成されたデザインともいえるでしょう。

ココもみどころ

男雛の衣装は通常、一種類の生地で仕立てられますが、本品では上下で異なる生地を組み合わせ、色どりの楽しさに重きを置きました。これまでにはない新しい試みとして、作り手の遊び心がさりげなく息づいています。

女雛の衣装にも新しい遊び心を添えました。襟元には愛らしい花柄刺繍のレース生地を取り付け、控えめでありながらもさりげないアクセントとなっています。

『お姫さま』ならぬ『プリンセス』を意識し、男雛・女雛の手持ち道具（笏・扇）を洋風にアレンジしました。細やかな金物細工とラインストーンの輝きが世界観に華やかさを添えます。

お顔だち

頭の制作は熊倉基安によるもの。ほんのりと赤みを帯びた柔らかな肌色に、整った顔立ちとはんなりとした目元の化粧がほどよく調和し、気品に満ちた表情を際立たせています。

女雛の天冠（てんがん）もティアラ風にアレンジ。こちらにもラインストーンをほどこし、さらなる輝きを演出しています。

主役をより美しく演出

人形をより美しく、そして敬意をもって飾るために欠かせないのが周辺のお道具類。なかでも屏風や飾り台は単なる背景ではなく、主役を引き立て、空間全体に調和と格式をもたらす大切な存在です。

「主役の存在感を損なわず、より魅力的な空間を演出するためのものづくりを」

この想いを胸に、職人たちは日々、絵柄の構図や配色、質感に至るまで研ぎ澄まされた技術を注ぎ込み、より美しい製品を生み出し続けています。

人形本体に注目が集まるよう限りなくシンプルな構成。とはいえこだわりは随所に光ります。

伝統的な箔押し屏風の上に、グラデーションカラーを丁寧に転写して仕上げた屏風は、東京都墨田区の老舗屏風工房・片岡屏風店によるものです。

和紙ならまだしも、金属箔へのグラデーション加工は非常に珍しく、技術的にも高度な試みです。伝統技術と現代のテクノロジーが優美に融合し、本シリーズの世界観に寄り添う、幻想的な色合いと輝きをたたえた屏風に仕上がりました。

飾り台はオーバル（楕円形）デザイン。角のない優しい表情が魅力です。

舞台中央にもアレンジメントフラワーを配置しています。※草花の大きさ・色合いには若干の個体差がございます。

七宝柄の和紙で装飾されたあんどん。幻想的な灯りを演出します。

ひなまつりをお祝いしたご家族のひとときが、やさしい思い出となって積み重なり、素敵な夢や優しさが育まれていくことでしょう。ご家族の大切なプリンセスのもとへと素敵な夢が舞い降りる…そんな特別な雛飾りをどうぞお楽しみください。