羽子板の違いと選び方
女の子が初めて迎えるお正月に飾る羽子板。 一口に羽子板といっても、そのつくりや形、顔、衣装、素材などにはさまざまな違いがあります。
昔ながらの押絵羽子板や木目込羽子板をはじめ、現在ではつまみ細工や木彫など、その表現の幅も広がっています。 ここでは、従来から親しまれてきた羽子板を中心に、それぞれの違いと、実際に選ぶときに見ておきたいポイントをご紹介します。
羽子板の種類と制作工程の違い
人物をかたどった従来の羽子板は、制作工程の違いから、大きく「押絵羽子板」と「木目込羽子板」に分けられます。 見た目だけでなく、つくり方や使用する部品、素材などにも違いがあり、それが価格にも表れます。
▲ 押絵羽子板
型紙と布地で綿を挟み、糊付けした細かなパーツをいくつもつくり、それらを一つひとつ組み合わせて仕立てていきます。
細かなピースを組み合わせていくジグソーパズルに近く、パーツの膨らませ方や数によっても仕上がりの表情が変わります。
▲ 木目込羽子板
土台に筋彫りを施し、そこへ衣装となる生地を木目込んで仕立てます。
現在流通している木目込羽子板では、土台に発泡スチロールを使用したものが多く見られます。
細かなパーツを一つずつつくり、組み合わせていく押絵羽子板は、木目込羽子板に比べて制作に手間がかかるため、一般的に価格も高くなります。
鯉徳では、押絵羽子板の魅力は単に価格が高いことではなく、細かな工程の積み重ねが生み出す立体感や造形の美しさにあると考えています。 衣装の重なりや身体の動きなど、完成した姿まで見比べてみてください。
形状(デザイン)の違い
人物を表現した羽子板では、衣装の見せ方によって全体の形にも違いがあります。 代表的なものが「標準型」と「振袖型」です。
▲ 標準型
衣装や袖などのパーツが板の中に収まる形状。
羽子板本来の輪郭が見えやすく、すっきりとまとまった印象になります。
▲ 振袖型
振袖の裾や袖を板の外側へ広げた形状。
衣装の広がりが強調され、華やかで動きのある姿になります。
それぞれに異なる魅力がありますが、見るべきなのは形の名称だけではありません。 顔の大きさと衣装の広がり、板との余白などを含め、全体のバランスに違和感がないかを見て選ぶことが大切です。
また、使用するパーツが増えるため、一般的には振袖型の方が価格が高くなる傾向があります。
顔(面相)の違い
人物を表現した羽子板では、顔も印象を大きく左右します。 人形の顔は「面相(めんそう)」と呼ばれ、仕上げには手描きと印刷があります。
手描きの面相では、いくつもの色を塗り重ね、眉や目元、口元などを筆で描いて仕上げます。 色の重なりや線の太さ、わずかな描き方の違いによって、一つひとつ異なる表情が生まれます。
印刷による面相と見比べると、細かな線や色彩の重なりなどに違いが表れます。 顔立ちそのものの好みとあわせて、衣装や羽子板全体との調和も見てみましょう。
衣装と素材の違い
人物を表現した羽子板では、衣装に使われる布地も価格や仕上がりを左右する大切な要素です。 素材だけでなく、織り方や染め、刺繍などの加工によっても羽子板の表情は変わります。
正絹や帯地、金襴、刺繍を施した生地など、使われる素材や加工はさまざまです。 同じような色柄に見えても、織りの細かさや光の受け方、立体感などには違いがあります。
一方、現在流通している木目込羽子板には、化学繊維の生地を使用した比較的手頃な価格帯の商品も多く見られます。 制作工程だけでなく、こうした衣装の素材も押絵羽子板との価格差が生まれる理由のひとつです。
ただし、素材の名称だけで判断するのではなく、その生地が羽子板の大きさや形、顔立ちに無理なく調和しているかまで見たいところです。
ケースの違いを見る
ケースにも、木製や樹脂製など素材の違いがあります。 木製ケースでも使用する木材や仕上げによって、質感や価格は変わります。
「黒檀塗」「花梨塗」などの表記は、必ずしもケースそのものが黒檀や花梨で作られているという意味ではありません。 一般的には、それらの銘木を思わせる色調や木目に仕上げた塗装を指します。 素材名と仕上げの名称は分けて確認するとよいでしょう。
また、ケースを使わず壁に掛けて飾れる羽子板もあります。 飾る場所や住まいに合わせて、ケースに入れて飾るか、壁に掛けて飾るかという選び方もできます。
サイズ・大きさを見る
羽子板の大きさは、一般的に「10号」「13号」「15号」といった号数で表されます。 1号はおよそ1寸(約3cm)が目安で、数字が大きくなるほど羽子板も大きくなります。
たとえば10号なら、羽子板本体の高さは約30cmがひとつの目安です。 ただし、同じ号数でも作り手や形によって実際の大きさは異なります。
また、ケースに入れて飾る場合は、羽子板本体よりも実際の飾り寸法は大きくなります。 購入の際は、号数だけで判断せず、商品ページに記載された本体やケースの実寸もあわせて確認してください。
広がる羽子板のかたち
ここまでご紹介した押絵や木目込は、人物をかたどった従来の羽子板に見られる代表的なつくりです。 一方、現在ではさまざまな手仕事を取り入れた、従来とは異なる表現の羽子板もつくられています。
つまみ細工の羽子板
小さく裁った布を折り、つまんで花びらなどを形づくる「つまみ細工」。 花や久寿玉などを主役にすることで、人物を表現した従来の羽子板とは異なる姿に仕立てられています。
木彫の羽子板
木そのものの表情を生かし、彫刻や文様によって表現した羽子板もあります。 鯉徳では、北海道の伝統工芸「二風谷イタ」の技法を取り入れたオリジナル羽子板など、異なる地域の手仕事と節句文化を結びつけたものもご紹介しています。
受け継がれてきた祝いの意味を大切にしながら、羽子板の表現は少しずつ広がっています。
全体のバランスを見る
制作工程、形、面相、衣装、素材、そして大きさ。 それぞれの違いを知ることは、羽子板を選ぶうえで大切な手がかりになります。
ただ、鯉徳が最後に見るのは、一枚の羽子板としての美しさです。 顔と衣装の大きさ、板の形、素材の使い方、そして余白まで含め、全体の造形が無理なく整っているものを選んでいます。
飾る場所や大きさも考えながら、自分たちが心惹かれる一枚を見つけてみてください。