コレクション:

朝比奈朔太郎 五月人形 コンパクト

伝統工芸品 越谷甲冑 制作工房
朝比奈朔太郎


埼玉県越谷市。江戸時代、日光街道の宿場町として栄えたこの地には、日光東照宮の造営や修築に携わった職人たちが定住することも多く、その人々らにより伝統工芸が発達してきた歴史があります。

手仕事の職人技は脈々と受け継がれ、端午の節句が盛んに祝われるようになる頃には金工、漆工、皮革、組み紐などのあらゆる工芸を組み合わせ"越谷甲冑(こしがやかっちゅう)"が誕生しました。平成8年に埼玉県指定伝統的手工芸品に指定されたこの品は、端午の節句を彩る縁起物として職人の手により丁寧かつ精工に作られています。


昭和34年に創業した甲冑工房 朝比奈。作号"朔太郎"を掲げる同工房は、江戸の風情を残した越谷甲冑の伝統を大切にしながらも、現代のニーズを汲み取る努力を怠らないものづくりを展開しています。

朝比奈朔太郎の特徴とこだわり。

コンパクトサイズの本物志向

都市部を中心にニーズの高まるコンパクトサイズの五月人形。小型のお人形は"兜飾り"が最良の選択でしたが、『小さくても鎧飾りのような豪華さがほしい』という要望は年々高まる傾向に。

OEMとして他社の武者人形に着せる小型甲冑を制作していた朔太郎は、そこで培った技術をそのまま自社の甲冑制作にも応用。業界でいち早く小型サイズの鎧飾りを世に送り出しました。その後コンパクト五月人形づくりの先駆者である同工房はサイズを小さくすることだけにとどまらず、ニッポンの職人技が感じられる精緻な甲冑づくりを目指し、小型でありながらも従来の甲冑制作と変わらない技術と品質を落とし込んだ"本物志向のコンパクト五月人形"を手間ひまかけて作り上げています。

朝比奈朔太郎プロフィール

▲ 小札板を紐でつなぎ合わせ飾りつけていく"威(おど)し作業"は、穴数が多いほど手間がかかります。しかし出来上がったときの美しさは一目瞭然。朔太郎が使用する小札板は穴の間隔がおよそ3mm。業界屈指の細かさを誇ります。

▲ 細かな部品でも作業工程を省くことはせず、従来の製品同様、飾り金具は全て本金鍍金金物を使用(部品に樹脂は一切使用していません)。

色彩へのこだわり

従来の鎧兜特有の"重厚感"や"威圧感"を感じさせないコンパクトな造形は、これまで五月人形に対して関心の薄かった女性に対しても興味を引きつけさせるきっかけにもなりました。そこで新たに生まれた女性からのニーズも作品づくりに反映させ、従来にはない華やかな色合いの甲冑を積極的に展開しています。

威糸を通す本数が多い分、多様な色彩表現が可能となった朔太郎の甲冑。しかし無作為に色数を増やすのではなく、日本古来の伝統に基づく配色や、各色が持つイメージや意味などを吟味し、日本人の美意識を表現すべく情緒的で整った色彩表現を追求しています。

朝比奈朔太郎プロフィール

▲ 裾濃(すそご)
グラデーション状に裾へいくほど色が濃くなっていく色目。

朝比奈朔太郎プロフィール

▲ 匂(におい)
裾濃の逆。グラデーション状に裾へいくほど色が淡くなっていく色目。

朝比奈朔太郎プロフィール

▲ 沢瀉(おもだか)
武士たちが植物の沢瀉を"敵を射抜く矢尻"と見立てげんを担いた三角形で構成される色目。

伝統工芸の未来をつくる。


少子化や住宅事情など生活様式が急激に変化しているなか、伝統工芸や文化を今後どう存続させていくのかが論じられることも多くなり、節句業界でもその対策を見出すことが急務となっている昨今。

解決策が見えず未だ何も行動しない関係者の多い中、朔太郎は制作活動のみならず、節句文化や五月人形の啓蒙活動にも尽力。行政や他団体と協力し合いながら、江戸時代から続く伝統的手工芸品"越谷甲冑"をより多くの人に知ってもらおうと地域活動にも積極的に参加しています。その姿は新たな時代の職人像として、他の職人たちに大きな刺激を与えていることは言うまでもありません。

また伝統工芸品をより身近に感じてもらえるよう、そして工芸技術を後世に残したいという思いから、節句を迎える人たちだけでなく外国人や女性、若者にも受け入れられる新商品の開発にも取り組んでいます。

朝比奈朔太郎イメージ

▲ 日光街道越ヶ谷宿 春の宿場まつり甲冑めぐり
かつて宿場町だった歴史や文化を周知させ、郷土愛を育むことを目的としたまちづくり運動。主催:越谷新町商店会・越谷市本町商店会・越谷商工会議所

朝比奈朔太郎プロフィール

▲ 2016年に埼玉県が実施した"伝統工芸品等新製品開発コンテスト"では、甲冑制作技術の一つである"威(おど)し作業"を取り入れたスマホケースを企画し最優秀賞を受賞。

恐れずに行動を起こすことで道を切り拓く朝比奈朔太郎。五月人形を通じて今後私たちにどんな驚きを与えてくれるのか、そしてこれからの伝統文化をどう創り上げていくのか。制作する甲冑同様、その行動にますます注目が集まります。





 朝比奈朔太郎 ■経済産業大臣指定伝統工芸士

昭和34年 埼玉県越谷に創業。コンパクトサイズの甲冑づくりに定評があり、一際目を引く色鮮やかな配色もまた特徴のひとつ。鎧兜特有の重厚感や威圧感を感じさせない独自のスタイルは、端午の節句に華やかさを求める女性からの支持も高い。 ▶インタビューページへ