細かい作業にも妥協なし
兜正面の"鍬形(くわがた)"は、真鍮製の24金メッキ仕上げ。松葉模様をあしらいました。
極細の威糸(おどしいと)を使い、それを一本ずつ通していく間隔も極狭。鎧全体に細かくもぴっちりと威糸が並ぶ姿から、職人の丁寧な仕事ぶりが感じられます。
ベースとなる色彩には"萌黄色"を選択。新緑の頃、植物の新芽が萌え出る色を表現したこの色合は"強い生命力"を意味します。男児の健やかな成長を祈念する端午の節句で飾るにふさわしい色彩ともいえるでしょう。
また鎧の各部位に三角形もしくは逆三角形の意匠が見られますが、これは"沢瀉威(おもだかおどし)"とよばれ、源平時代の武士に好まれたデザインです。沢瀉(おもだか)とは水辺に自生する植物で、その葉の形が相手を貫く"矢尻"に似ていることから、別名"勝ち草""勝軍草"とも呼ばれました。
当時の武士はこの葉の図案を兜に落としこみ、多色の威糸(おどしいと)で表現することで、縁起を担ぐとともに自身の美的センスを競い合っていたともいわれています。
「人生における苦難や己の意思を、矢尻のように貫いていける青年に育って欲しい」
口にするのはちょっと気恥ずかしいけれど、そんな親の本心を鎧に託して毎年飾ってみてはいかがでしょう。きっとその想いは優しく届いてくれるはずですよ。


後ろ姿の美しさにもこだわります。
背中側から心臓を守るための板である"逆板(さかいた)"が取り付けられ、その中心部の金具の環に"揚巻結び(あげまきむすび)の紐"が付いています。
揚巻結びの紐から"水呑みの緒(みずのみのお)"とよばれる紐が、左右に広がり両袖に取り付けられています。これは体をかがめて水を飲むとき、袖が前にこないようにしたり、急な動きでも袖が翻らないようにするために付けられた紐です。
正面からは見えないという理由から、背面のパーツは省略されて作られる場合が多いのですが、一流の職人たちは簡素化せず、どこから見ても美しく、より忠実であることにこだわり製作しています。
"主張しすぎず主張して、主役をより美しく"
人形の美しさをより際立たせるために存在する周辺のお道具類。
なかでも屏風は、全体のイメージを左右するほど重要な役割を担っています。
主役の存在感を損なわずして、より魅力的な空間を演出をするためのモノづくりを。
そんなテーマと向き合いながら、職人は日々、絵柄の構図や配色、そして質感に至るまで試行錯誤を繰り返し、卓越した技術をもって美しい製品をつくり続けています。

魔法のような金屏風。アクセントも効果的。
金屏風はひな人形でも五月人形でも定番中の定番商品。シンプルさゆえに、作りの甘い人形は粗が目立つように見え、逆に丁寧につくられた人形はその美しさがより際立つという魔法のような屏風でもあります。
この金屏風はより上品で落ち着いた雰囲気を出すために、金紙の上に絹地を敷いた"裏箔(うらはく)"という手法を取り入れ、金特有の色調をあえて和らげて制作しています。両端には鎧の威糸の色調にあわせた布地を配し、お互いの調和を図っています。
また屏風の開閉部分には金具の蝶番を一切使わず、和紙でできた"羽根"とよばれる和紙蝶番を使用する、いわば職人の伝統技術でつくる制作工程(本仕立)にこだわりました。

開閉部に切込が入っていて、両面に開く仕組みが特徴です。継ぎ目に隙間ができないので、見た目にもすっきりとした印象となります。職人の街、墨田区にある老舗屏風工房の片岡さんが生みだす技ありの工芸品です。


"藤巻木製仕様の弓"と"天然羽根仕様の矢"。シンプルな一本矢飾りには"狙い(願い)が一発で仕留め(叶え)られますように"とのメッセージが込められています。
また"光り物は邪気をはらう縁起物"と古来より言い伝えられていることから、太刀は簡略化せずに鞘から抜ける仕様になっています。(模造刀で切れませんが、鋭利な部分もありますので取扱にご注意ください)
大人目線でも十分満足していただける美しさは、ジャパンクオリティの五月人形だからこそ。
お子さまの成長を見守りながら、ぜひご家族揃って端午の節句をお楽しみ下さい。
商品詳細
人形作者 |
朝比奈朔太郎(あさひなさくたろう) |
生産地 |
埼玉県 |
サイズ |
間口60 × 奥行40 × 高さ58 cm |
本体仕様 |
正絹糸威 純金鍍金鍬形
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弓太刀 |
藤巻弓太刀(一本矢) ※太刀は鞘から抜けます。 |
屏風 |
本仕立二曲裏箔屏風 |
飾台 |
木製黒塗平飾台 |
サービス品 |
■お手入れセット(毛バタキ・手袋・クロス) |
注意事項 |
■手作りのためサイズや形状が各々多少異なります。 |
作者・工房について
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朝比奈朔太郎 ■経済産業大臣指定伝統工芸士昭和34年 埼玉県越谷に創業。現代の住宅事情にあわせたコンパクトサイズの甲冑づくりに定評があり、一際目を引く色鮮やかな配色もまた特徴のひとつ。鎧兜特有の重厚感や威圧感を感じさせない独自のスタイルは、端午の節句に華やかさを求める女性からの支持も高い。▶インタビューページへ |